半夏白朮天麻湯の特徴
めまいの症状を中心に、慢性頭痛や頭重感、吐き気や嘔吐、メニエール症候群、手足の冷えなどをともなう人に用います。ふだんから体力がなく冷え性で胃腸が虚弱な人に効果があります。さらに、胃アトニー症や胃下垂、胃神経症にも用いられています。
人参湯(ニンジントウ)の類似処方で、水分の循環をよくし、消化を整え、からだを温める作用があり、神経・筋疾患で用いられています。
中国・金時代の「脾胃論(ヒイロン)」という古典書に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力は虚弱
- 胃腸虚弱
- 下肢が冷える
- めまい、頭痛がある
- 吐き気がある
半夏白朮天麻湯の作用
半夏(ハンゲ)、乾姜(カンキョウ)、生姜(ショウキョウ)、陳皮(チンピ)は、お腹を温め、痰を取り去り、吐き気を抑える作用があります。
天麻(テンマ)は、頭痛やめまいを抑える作用があります。
白朮(ビャクジュツ)と茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)は、体内の余分な水分を排出する作用があります。
黄耆(オウギ)、人参(ニンジン)、麦芽(バクガ)は胃腸の働きを助けて、体力を増進する作用があります。黄柏(オウバク)は熱をさます作用があります。
主薬である半夏、白朮、天麻の3つを取り、半夏白朮天麻湯という名称となっています。
小児の起立性調節障害に対する効果
臨床では、小児の起立性調節障害に対して半夏白朮天麻湯で改善されたという報告があります。(参考 小児科臨床 1992)
頭痛に対する半夏白朮天麻湯の効果
慢性頭痛の治療では、片頭痛や緊張型頭痛の両方の症状に使用されています。胃が弱く、めまい、吐き気をともなう頭痛患者さんが服用し、数日で効果を実感できたとの報告があります。
体力が低下しており、消化機能が虚弱な人で、冷えやすい、というような方に向いています。
めまい・ふらつきに対する半夏白朮天麻湯の効果
半夏白朮天麻湯は、めまい、ふらつきに対して有効性の報告が多数あります。
漢方と診療 Vol.5 No.3(2014.11)では、神経性疼痛(たとえばヘルニアや三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛)13人に対して、プレガバリン・トラマドール・カルバマゼピン・抗うつ薬を使用し、ふらつきやめまいが出てしまう人達を対象に、半夏白朮天麻湯を使用し、開始後1週間後~5週ほどの間で、ふらつきの改善効果が出たという報告があります。
半夏白朮天麻湯の成分・効能
半夏白朮天麻湯は、下記の12種類の生薬からなります。
・半夏 (ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。
・白朮 (ビャクジュツ):キク科のオケラの根茎を乾燥させたもの。薬効は、体内の水分代謝を正常に保つ作用があります。
・茯苓 (ブクリョウ):サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。
・沢瀉 (タクシャ):オモダカ科のサジオモダカの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、尿毒症の改善、肝脂肪の蓄積抑制、利尿作用があります。
・天麻 (テンマ):ラン科のオニノヤガラの塊茎を蒸したもの。薬効は、鎮痛作用、鎮痙作用があり、関節炎、小児の脳膜炎、目のかすみに用いられています。
・人参 (ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は、消化機能を高め、「気」の生成を増すことにより、体力を回復させる作用があります。また新陳代謝を盛んにし、免疫機能を高める働きがあります。
・黄耆 (オウギ):マメ科のキバナオウギ、ナイモウオウギなどの根を乾燥させたもの。薬効は、「気虚」を改善し、強壮作用、滋養作用、体内に滞った「水(スイ)」を除く作用があります。
・乾姜 (カンキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をむしてから乾燥させたもの。薬効は、冷えを改善する作用があります。消化機能を促進する作用もあります。
・陳皮 (チンピ):ミカン科のウンシュウミカンなどの成熟果皮を乾燥させたもの。薬効は、「気」をめぐらし、整える作用や健胃作用があります。
・黄柏 (オウバク):ミカン科のキハダの周皮を除いた樹皮を乾燥させたもの。薬効は、苦味健胃作用、整腸作用があります。
・麦芽 (バクガ):イネ科のオオムギの発芽した頴果(えいか)を乾燥したもの。薬効は、健胃作用、消化作用、滋養作用があります
・生姜 (ショウキョウ) :ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め消化機能を整える作用があります。
半夏白朮天麻湯の副作用
体力がある人は適しません。
配合生薬の人参により、体力のある人が服用すると、のぼせ、湿疹、蕁麻疹、皮膚炎の悪化などの症状があらわれる可能性があります。
半夏白朮天麻湯の服用方法
ツムラ半夏白朮天麻湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。
半夏白朮天麻湯は、体を温める「散寒剤」ですので、お湯で服用するとより効果的です。