猪苓湯の特徴
膀胱炎、尿道炎、腎炎、腎臓・膀胱結石による排尿困難、排尿痛などの泌尿器系疾患や、腰から下のむくみ、残尿感、下痢などにもちいられる漢方薬です。口が渇く人に適しています。
中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)」や「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力が中くらいの人
- 排尿困難などの泌尿器系に症状がある
- イライラ感、不安感がある。
- 腰から下がむくむ
- 口が渇く
猪苓湯の作用・効果
猪苓(チョレイ)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、滑石(カッセキ)には体内の余分な水分を排出する作用があります。阿膠(アキョウ)は、止血作用があります。
尿道症候群に対する猪苓湯の効果
臨床では、尿道症候群(尿道の違和感で、尿道の感染症と近い意味合い)の患者さんに対して猪苓湯を処方したところ、71%の有効結果が出たという報告があります。(参考 尿道症候群に対するツムラ猪苓湯の効果 1992)
猪苓湯の尿路結石形成阻止効果
尿路結石の漢方治療として、猪苓湯は排石促進剤として使用されてきた歴史的背景がある一方、再発予防の効果などはまだ十分な科学的根拠がない状態ではあります。しかし、構成生薬である沢瀉の抽出成分を使用した成人男性による研究では、シュウ酸カルシウム結石の成長抑制効果が見られています。
ただし、その後も実際に成人に対して猪苓湯10gを使用した研究では、結石の大きくなりやすさなどに対して有意なデータは得られていません。現状では強い科学的根拠には欠け、減塩などの生活習慣に勝る選択肢とはいえません。
脳卒中後尿閉や神経因性膀胱に対する 猪苓湯の効果
漢方医学 Vol.29 No.6 2005にて、平均年齢79.7歳、10例の脳卒中後(脳梗塞4人、脳出血6人)の神経因性膀胱ならびに尿閉に対し、投与後2週間で90%の患者に改善がみられたと報告されています。ただし、塩化ベタネコール(ベサコリン)などの併用薬を必要とした例が多かったと注意書きをしています。
猪苓湯の成分・効能
猪苓湯は、下記の5種類の生薬からなります。
・猪苓 (チョレイ):サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核を乾燥させたもの。薬効は、利尿作用、解熱作用、消炎作用があります。
・沢瀉 (タクシャ):オモダカ科のサジオモダカの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、体の過剰な水分を除く作用があります。口の渇き、胃の中に水が溜まっているときにも用いられます。
・茯苓 (ブクリョウ):サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、利水作用があり、余分な水を排泄する作用があります。胃腸を整え、精神を安定化する作用もあります。
・阿膠 (アキョウ):ロバなどの皮を加熱抽出して得られるニカワ。薬効は、滋養作用、補血作用、止血作用があります。
・滑石 (カッセキ):含水ケイ酸アルミニウム及び二酸化ケイ素からなる鉱物。薬効は、消炎作用、利尿作用、止瀉作用があります。
猪苓湯の副作用
特に重い副作用の報告はありませんが、人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくことがあります。
猪苓湯の服用方法
ツムラ猪苓湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。