腰痛の漢方薬(効果効能、使いわけ)

腰痛症状の特徴と原因

腰痛は、最も多くの人が訴える症状で、高齢になるとさらに増えます。原因は、筋肉の過労や、運動不足、加齢のための脊椎変形などが主な原因です。まれに、内臓疾患、カリエス、骨腫瘍、がん転移などの疾患の初期症状として腰痛があらわれることもあります。

腰痛で一番多い原因が、腰部の神経や骨、筋肉の異常に伴う痛みです。神経の痛みとしては、腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などがあり、下肢にまで痛みやしびれが生じることが多いです。骨の痛みとしては、骨粗鬆症、圧迫骨折があげられます。さらに、筋肉の痛みとしては、筋筋膜性腰痛があります。骨の痛みと筋肉の痛みは、重だるく、動かした時に痛みが生じる場合が多いです。

西洋医学の治療

腰痛の原因によって治療法が全く異なるため、原因をはっきりさせることが重要です。

多くの腰痛では、変形性脊椎症、腰部椎間板症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離、すべり症などの多様な診断名がつけられますが、そのほとんどが非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による鎮痛治療が中心です。NASIDsは副作用として胃腸障害が生じやすく、長期の使用や高齢者の使用には注意を要します。そのほかにも、腰痛体操、温熱療法、牽引療法などが行われます。場合によっては、手術的な方法をとることもあります。

漢方医学の治療

腰痛は、腎虚や血虚によって冷えから生じると考えられています。腎虚の場合は、八味地黄丸や牛車腎気丸など、体を温めて痛みを取る漢方薬が用いられます。ただし両者はいずれも地黄が含まれているため胃もたれや食欲不振を起こす場合があります。胃腸の弱い人には、六君子湯か四君子湯を併用することが多いです。また、消化機能が弱く、八味地黄丸や牛車腎気丸が使えない場合は、桂枝加朮附湯や桂枝加苓朮附湯を用います。

血虚がある場合は、駆瘀血剤が用いられます。腰痛に加えて手足の冷えが強い場合は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が用いられます。冷えがなければ、疎経活血湯が用いられます。中年の女性で上半身がほてり、下半身が冷えると訴える人の腰痛には五積散が効果的です。

また、四肢の冷えが強く、冬にはしもやけができるような人には当帰四逆加呉茱萸生姜湯が有効です。

さらに、急性の腰痛で、特に背中から腰にかけての痙攣性の痛みには頓服として芍薬甘草湯が効果的です。

腰痛に対して用いられる主な漢方処方

 
以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

 
ライフスタイルで注意すること 

慢性の腰痛は、それ自身がストレスとなり、痛みをさらに悪化させる悪循環となっている場合があります。心身のリラックスがとても大切です。自宅でゆっくりと入浴をしたり、温泉に行ったりすることも効果的です。また、日頃から骨盤を安定させるためにコルセットなどを使うことも有効です。

参考文献

・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・痛み・鎮痛の基本としくみ(秀和システム)

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