女性の夜尿症(大人の夜尿症)

夜寝ている間におねしょをしてしまうことを「夜尿症」といいます。おねしょというと小さい子供を思い浮かべやすいですが、実はおねしょをする大人が増えています。特に女性に多いといわれています。女性は男性に比べて尿道の長さが約5分の1しかないため、尿のトラブルが多くみられますが、恥ずかしくて誰にも相談できず、一人で悩んでいる人が多いのが現状です。

子供のおねしょは膀胱の未発達が原因であるため、成長すれば自然と治るので心配いりませんが、大人の場合には何らかの原因によって起こる病気のひとつと考えます。

大人のおねしょ、夜尿の原因

夜尿を引き起こす原因としてまず挙げられるのが、ストレスによる自律神経の乱れです。本来人間は夜寝ている間、膀胱に尿が大量にたまらないように抗利尿ホルモンによって尿の量を調節しています。しかし、自律神経が乱れることによって抗利尿ホルモンが十分に分泌されず、尿量を調節できないと、寝ている間に大量の尿が膀胱にたまり、おねしょをしてしまうのです。

女性の場合、出産による影響もあります。骨盤の底に膀胱や尿道を支えている骨盤底筋という筋肉があります。この骨盤底筋が出産や加齢によってゆるんで収縮力が弱まると、尿道をしっかり閉めることができずに、尿漏れを起こすようになります。しかし、この場合には骨盤底筋を鍛えることによってかなり改善されます。

その他には、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進症、脳腫瘍、膀胱や腎臓の機能低下、糖尿病などの病気が夜尿症を引き起こすといわれています。

夜尿症の治療には生活指導、夜尿アラーム療法、薬物療法の3つがあります。夜尿は生活習慣の影響が大きいので、生活指導を通して現在の生活を見直し、水分摂取量や食事内容などを改善していきます。それだけでは夜尿の改善が見られない場合には夜尿アラーム療法や薬物療法を取り入れていきます。

夜尿アラームとは、寝る前にパンツにセンサーを付け、水分を感知するとアラーム音がなる装置のことで、おしっこをとめる訓練をしながら治していきます。薬物療法には、尿量を減少させる抗利尿ホルモン剤、尿意覚醒を促す抗うつ薬、膀胱の緊張をゆるめる抗コリン剤が用いられます。しかしどれも副作用が現れる可能性があるので使用には注意が必要です。

漢方医学と夜尿症(大人のおねしょ)

漢方医学では夜尿をどのように治療していくのでしょうか。

漢方医学の基本的な考え方として、体全体のどこのバランスが乱れているのかをよく観察し、バランスを取り戻していけるように治療します。したがって、同じ夜尿の症状でも、人それぞれ体質が異なるので、その人に合った漢方薬を処方していきます。

漢方医学的には、夜尿は大きく3つのタイプに分けられます。

一つ目は足腰や下腹部など下半身の冷えが強いタイプです。「腎」が冷えている「腎陽虚(じんようきょ)」という状態です。尿量が多く、冬や寒い日に症状が悪化します。この場合、腎を温めて機能を回復する「八味地黄丸(はちみじおうがん)」が有効です。

二つ目は尿量は少ないが、尿意を我慢できず排尿回数が多いタイプです。「脾」の機能が低下して体内に十分に栄養分を送ることができない「脾虚」という状態です。栄養が不足すると尿道の筋肉がゆるみ、尿がもれやすくなります。このタイプは疲れやすく、食欲不振や軟便が見られます。したがって脾を元気にし、体力を回復する「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を使用します。

三つ目はストレスを受けて緊張が強いタイプです。夜寝てもすぐに尿をもらしてしまいます。神経質で怒りっぽく、緊張や我慢で症状が悪化します。これは、ストレスを受けて「肝」が弱り、気が停滞している「肝気うっ滞」の状態です。このような場合には気の流れを改善し神経の高まりを抑える「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」が用いられます。

夜尿はそれ自体が精神的負担の大きい症状です。過敏になりすぎて余計悪化してしまう場合もあります。あせらずにゆったりとした気持ちで取り組んでいくと共に、周囲の理解と協力が大切です。

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