あせもとは、汗をかいた後に皮膚に小さな水ぶくれや小さな湿疹が現れ、痒みを伴うことのある皮膚炎のひとつです。
高温多湿の夏の時期やスポーツ時など、多く汗をかいた後は清潔な服に着替える、シャワーを浴びるなどして肌の清潔を保つことが大切です。これを怠れば外部からの汚れや皮脂の汚れが表皮で混ざり合い、汗をかいたままの服の中は湿度は保たれ細菌が繁殖しやすい環境となるため、これらがあせもの原因となります。
特に小児はあせもになりやすいため、肌を清潔に保てているか、厚着をさせすぎていないか、部屋の温度湿度が適当であるか、大人がこまめに確認することが大切です。
また、漢方でいう「気」(パワー)が不足している人は、皮膚のバリア機能が低下して表皮の緊張がゆるんでいる状態にあるため、気候の変化や体調の変化があったときに必要以上に汗をかいてしまいます。すると大量の汗が皮膚表面でうまく発散されず滞ってしまうため、あせもが出来やすくなります。
皮膚科での治療としては、主にステロイド外用薬が処方され、細菌に感染し炎症が治まらない場合は内服の抗生剤が処方されることもあります。
一方、適度に汗をかき体温を下げることは身体の機能として必要ですが、汗をかきすぎてしまうと体力や気力を奪われ皮膚の状態も悪くなると漢方では考えます。
そこで、汗をかきすぎる体質を改善することで、あせもが出来にくい身体にしていく体質改善ために使う漢方薬と、あせもになってしまった時、そのつらい症状に対して使われる漢方薬をここでいくつか紹介します。
あせもにおすすめの漢方薬
『防已黄耆湯』 ◇大量の汗をかく色白ぽっちゃりタイプに ‐
常に汗をかいているので、ハンカチが手放せないような人のあせもに防已黄耆湯は適しています。
色白で筋肉のないいわゆる水太りタイプで、玉のような汗を額や首から流し、いつも身体がだるく重い様子であることが特徴です。
防己黄耆湯は、あせものほか膝の関節炎や浮腫(むくみ)、ダイエットなどでも使われます。
漢方でいう気・血・水の主に「水」に問題があるととらえ、身体の中の余分な水を取り去る利水剤として、虚弱体質でむくみやすいタイプに使用されます。
また、汗を大量にかくことは「気」不足が考えられるため、構成生薬の黄耆で皮膚表面の熱を発散して汗を止め、気を補います。黄耆にはさらに皮膚の化膿を止める作用もあるため、気虚タイプの皮膚の不調には無くてはならない生薬です。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、肝機能障害、黄疸などが記載されています。
『黄耆建中湯』 ◇元気がない痩せ型タイプのあせもに ‐
虚弱体質で汗をかきやすい人のあせもに黄耆建中湯は適しています。多くは痩せ型であり、胃腸虚弱で食欲がなく、寝汗をかいたり、少々神経過敏なところがあるのが特徴です。
腹痛を訴える虚弱児のあせもにも使われます。黄耆建中湯は、胃腸の働きを改善して身体に体力をつける小建中湯に、皮膚表面の熱を発散して汗を止め、皮膚の化膿を止める黄耆をプラスしたもので、あせものほかに大病後や手術後の体力回復や、アトピー性皮膚炎にも使われます。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、肝機能障害、黄疸などが記載されています。
『柴胡桂枝乾姜湯』 ◇冷え症がなくイライラがある人のあせもに ‐
体力がなく冷え症で、特に上半身に汗をかきやすい人のあせもに柴胡桂枝乾姜湯は適しています。
イライラやうつ気分など精神的な症状があることが特徴で、不眠や動悸、息切れ、口が乾く、手足の冷えや寝汗が現れることがあります。西洋医学的にこれらは自律神経の失調とみることもできます。
構成生薬の柴胡と黄芩、牡蛎で不安や不眠などの精神症状の改善し、乾姜や桂枝で気をおろし身体を温めます。自律神経を整え汗がでにくい身体にすることで、あせもができるのを防ぎます。
あせもが出来てしまったときには、症状に合わせて消風散などの漢方薬を使ってみるのもよいでしょう。ただし飲み合わせがあるので、必ず専門家に相談するようにしてください。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、間質性肺炎、ミオパチー、肝機能障害、黄疸などが記載されています。
『白虎加人参湯』 ◇皮膚にほてりのあるあせもに ‐
のどが異常に渇き、身体がほてり、舌をみると苔が白く乾燥していているような人のあせもに白虎加人参湯は適しています。
身体に熱がこもり、その熱を逃がそうと大量に汗をかいてしまった結果、体内の水分が失われ皮膚がほてり、あせもやかゆみが現れます。
漢方の気・血・水でいうと、「気」と「水」に問題があるととらえ、水の足りない「津虚」、パワーの足りない「気虚」を改善していきます。
白虎加人参湯はアトピー性皮膚炎や、夏の時期には熱中症や脱水症状にも使われることがあります。構成生薬のひとつである石膏が、強力に身体の熱を取り炎症や痒みを抑え、人参や粳米が身体に潤いを与え元気にします。
胃腸が弱く体力が著しく低下した人、身体の冷えが強い人には向いていません。食欲不振や吐き気がある人は、必ず専門家に相談するようにしてください。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、肝機能異常、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『消風散』 ◇かゆみが強くてジクジクしたあせもに ‐
体力中等度の人のジクジクしたあせもに消風散は適しています。分泌物が多くかゆみが強いのが特徴です。
石膏、地黄が含まれるため、胃腸の弱い人や身体の冷えが強い人には向いていません。構成生薬の石膏と知母は炎症や痒みを抑え、木通と朮がジクジクした湿疹を改善します。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。