甲状腺機能低下症(橋本病)の原因と症状

甲状腺機能低下症とは

甲状腺機能低下症とは、甲状腺の働きが低下することにより血液中の甲状腺ホルモンが不足した状態のことを言います。身体を活性化させる甲状腺ホルモンが不足することで、身体活動が低下する症状が徐々に現れます。甲状腺を障害して機能低下を起こす原因はいくつかありますが、その中でも代表的な病気が「橋本病」です。

橋本病とは

橋本病は、初めてこの病気に関する論文を発表した医学博士の名前から名付けられた病気です。甲状腺に慢性の炎症が起きている病気で「慢性甲状腺炎」とも呼ばれ、20代後半~40代の女性に多く見られます。

原因ははっきりしていませんが、自己免疫反応により甲状腺が攻撃されることで起こる炎症です。橋本病の人が必ず甲状腺機能が低下するとは限りませんが、甲状腺機能低下症の原因としてよく見られる病気です。自己抗体を測定することができるため、甲状腺機能低下症がある場合には、抗体を測定します。

橋本病の症状

個人差はありますが、橋本病になると甲状腺が腫れる(甲状腺腫)ことで首がふくらんだように見えたり、喉に違和感が起きたりすることがあります。甲状腺機低下症が起きると、甲状腺ホルモンが不足して新陳代謝が悪くなることで次のような症状が現れます。

・熱の産生が減り寒がりになる

・食欲が低下するのに、消費カロリーも減少するため体重が増える

・脈拍が弱くゆっくりになる

・顔などがむくみやすくなる

・意欲や気力の低下、忘れっぽいなどの症状が起こる

・その他 便秘、肌の乾燥、月経異常など

血液検査や甲状腺エコーなどで正しい診断がつくまでは、これらの症状から更年期障害やうつ病、老化、心臓病や肝臓病など他の病気と間違われることもあります。また橋本病の初期では、一時的に甲状腺ホルモンが過剰になることがあり、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と間違われることもあります。

甲状腺機能低下症(橋本病)の治療

橋本病そのものに対する特別な治療法はありませんが、甲状腺の機能低下が見られる場合は不足している甲状腺ホルモンを補充する薬を服用します。甲状腺の腫れを小さくする目的で使用することもあります。

効果が安定するまで多少期間が要ることや、服用量が多いと動悸や手のふるえなど甲状腺ホルモン過剰の症状が出ることがあるので、指示された用法・用量をきちんと守ることが大切です。

橋本病や甲状腺機能低下症の漢方薬治療と対策

橋本病などによる甲状腺機能低下症を漢方では、「気(生命エネルギー)」が不足した状態と考えます。甲状腺機能低下症の冷えや食欲低下、疲労倦怠感などの症状は気虚(気の不足)によく見られる症状です。

また気虚が続くことで「血」や「水」も不足するようになり、不安感や月経異常・皮膚の乾燥といった他の症状が起こる原因になると言われています。このようなことから、甲状腺機能低下症には気や血を補う、気の巡りを良くする、体を温めるなどの作用がある漢方薬が効果的と考えられています。

あくまで甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの補充など、科学的根拠のある治療を中心とすることはとても重要であることは言うまでもありませんが、漢方を補助的に使う場合は下記を用います。

補中益気湯・・・脾胃(胃腸)の働きを改善して消化吸収を高め、不足した気を補って、体に元気や抵抗力をつける漢方薬です。病期で体が弱っている人や虚弱体質の人に広く用いられます。

十全大補湯・・・気と血の両方を補う作用があります。体力が落ちて疲労し、冷えや血の不足による肌の乾燥が見られるような人に向いています。産後や病後の回復にもよく用いられる漢方薬です。

真武湯・・・体を温め、冷えて新陳代謝が落ちた状態を改善します。体内の水の偏りを調節する作用があり、胃腸に水がたまって起こる腹痛や下痢にも効果的です。

人参湯・・・体をお腹から温め、胃腸の働きを改善し気を補う作用があります。冷えがあって新陳代謝が低下し、胃腸も冷えて食欲がなく下痢しやすいような人に向いています。真武湯よりさらに冷えや水滞の症状が強いような場合に効果的です。

加味逍遥散・・・血の巡りを良くして月経異常を改善したり、自律神経に関わる「肝」の気の巡りを良くする作用があります。比較的虚弱体質で、肩こりや不眠・イライラなどの症状がある人に用いられます。

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