柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ):ツムラ10番の効能・効果、副作用

柴胡桂枝湯の特徴

かぜが長引いたときに用いられます。特に、皮膚が自然に汗ばみ、のぼせ、吐き気や食欲不振がある人に向いています。かぜを引きやすい人の体質改善に使われることもあります。また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胆のう炎、胆石症などの炎症疾患に対しても利用されます。

「柴胡桂枝湯」は「小柴胡湯」と「桂枝湯」を合わせた漢方薬です。桂皮湯は、過敏性腸症候群に使用される桂皮加芍薬湯から、芍薬の成分を半量にしたものです。

お腹の痛みがある胃腸風邪や、風邪の後半(風邪の初期よりも少し後半の、風邪が長引いてきているとき)や、自家中毒(周期性嘔吐症)などの子供の体質改善に用いられることもあります。

中国・漢代の「傷寒論(ショウカンロン)」や「金匱要略(キンキヨウリャク)」にも記されているように、広く応用されている古くからの基本的な処方です。

次のような人に有効です。

  • 体力がやや虚弱または中等度
  • のぼせがちな人
  • 腹痛を伴う
  • 寒気、頭痛、吐き気などがある人

柴胡湯系統のお薬を使用する場合は、

  • 大柴胡湯
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 小柴胡湯
  • 柴胡桂枝湯
  • 柴胡桂枝乾姜湯

上から順に強い柴胡剤で、大柴胡湯がタフな人に使用され強い、柴胡桂枝乾姜湯がマイルドな漢方になります。小柴胡湯が含まれる柴胡桂枝湯は中間くらいの強さになりますが、胃腸に優しい桂枝湯が入っているため、小柴胡湯よりマイルドな漢方薬となっています。

柴胡桂枝湯の作用・効果

柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)は炎症を鎮める作用があります。

半夏(ハンゲ)、生姜(ショウキョウ)は胃を温めて吐き気を抑える作用があります。

人参(ニンジン)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)は体力を増進し、胃腸の働きを助ける作用があります。

桂皮(ケイヒ)は体を温めて、痛みを抑える作用があります。

芍薬(シャクヤク)は、筋肉の緊張を緩和して痛みを抑える作用があります。

特に、けいれん性の内蔵の痛みに対して効果があり、過敏性腸症候群の腹痛にも用いられます。さらに、臨床報告では潰瘍を抑える作用や、肝機能障害の抑制作用、膵炎、胆のう炎の抑制作用が報告されています。

感染症を繰り返す子供に対する体質改善効果

少数例での報告ですが、生後5ヶ月から1歳6ヶ月で保育園に入園し、その後乾癬をなんどか繰り返す(数日でけろっと治るが、1週間後にまた熱が出る)という子で、それを繰り返してしまうという子たち10人を対象(免疫不全という病気ではないことを検査で確認済み)に、柴胡桂枝湯を使用してみたところ、一日2g~2.5gの使用でその後の感染による病院受診を半分以下に減らしたという報告があります。

これを実臨床で使用するかは意見の分かれるところだと思いますが、興味深い臨床効果です。

過敏性腸症候群に対する柴胡桂枝湯の効果

桂枝湯が過敏性著症候群に使用される漢方薬であり、柴胡桂枝湯は桂枝湯を含んだ漢方薬であることと、柴胡は心をゆるめ、ストレスや筋緊張をほぐす生薬であるため、筋緊張がありおなかのいたみもあるような過敏性腸症候群には良い効果が期待できる漢方薬です。(参考:日本消化器病学会雑誌 第107巻 第10号)

インフルエンザに対する柴胡桂枝湯

柴胡桂枝湯は、熱が出てすぐの急性期よりも、それが落ち着きもう少し先に使用する漢方薬なので、インフルエンザの急性期には使いません。熱がある程度下がったけどすっきりしない、だるい、頭痛が残るという時には選択しになり得ます。

小児てんかんやヘルペス脳炎後のこわばりに対して、柴胡桂枝湯に芍薬を増やすと、つっぱりや興奮が改善する、と言われています。(参考:JIM 7巻 7号 1997年 7月)。また、ストレスを軽減する柴胡があるため、パニック発作で痛みがある人に著効した、というような証と目的に合わせた利用による有効性の報告もあります。

柴胡桂枝湯の成分・効能

柴胡桂枝湯は、9種類の生薬からなります。

柴胡(サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷まし、「気」のうっ滞を除く作用があります。

桂皮(ケイヒ):クスノキ科のニッケイの樹皮または枝を乾燥させたもの。薬効は、「気」の巡りを整え、発汗によって体表の毒を除く働きがあります。解熱作用、鎮静作用、血行促進作用、抗血栓作用があります。

黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷ましながら、「水(スイ)」の滞りを除く作用があります。みぞおちのつかえや、胃の不快感、膨満感、下痢の症状を改善します。

半夏(ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。「水(スイ)」の代謝障害を改善するとともに、「気」の巡りを良くします。嘔吐、悪心、めまい、頭痛、痰などを改善する作用があります。

芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の巡りをよくする作用があります。筋肉のけいれんを鎮めたり、鎮痛作用もあります。

人参(ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は、消化機能を高め、「気」の生成をますことにより、体力を回復させる作用があります。また、新陳代謝を盛んにし、免疫機能を高める作用があります。

甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張を緩める働きがあります。

生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える作用があります。胸がつかえてムカムカしたり、ゲップ症状を改善します。

大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも用いるナツメの実です。薬効は、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたり、筋肉の緊張による疼痛や、腹痛などの痛みを和らげる作用があります。

柴胡桂枝湯の副作用

下痢や膀胱炎のような症状が現れることがあります。
膀胱炎は、柴胡桂枝湯に含まれる小柴胡湯による好酸球性膀胱炎や、柴苓湯(小柴胡湯が入っている)が原因と思われる無菌性膀胱炎(川下先生が報告)とあるように、時々報告されます。お薬の情報書(医学品副作用情報)に書かれているものでは、漢方による8例の報告のうち、7例は1年以上使用後、1例は半年後に発症したと言われており、一種のアレルギーにより起こる副作用で、薬と体が合わない場合に起こるのではないかと考えられております。頻尿、排尿痛、血尿、尿がすっきりできらないといった症状に注意しましょう。

また、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。

間質性肺炎と肝機能障害が報告されています。頻度は多くないのですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。

妊娠・妊婦・授乳婦について

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。となっています。妊娠中に注意する生薬である紅花、牛膝、大黄、桃仁、附子(烏頭)、芒硝などは含まれていないため、主治医と相談して使用を検討しましょう。

柴胡桂枝湯の服用方法

ツムラ柴胡桂枝湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。

気管支炎等で喉の不快感もある場合には半夏厚朴湯を併用するとより良い場合があるとされます。また、肝障害が心配な際には茵蔯蒿湯を併用すると良い場合があるとされます。

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