消風散の特徴
分泌物が多く、ジュクジュクし、かゆみが強い湿疹や蕁麻疹、水虫、アトピーなどの皮膚疾患に用いられる漢方薬です。
東洋医学で「風(フウ)」というのは、かゆみを引き起こす要因とされます。「風」によるかゆみを「消す」ということから、「消風散」と呼ばれています。
中国・明時代の「外科正宗(ゲカセイソウ)」という古典書で紹介されている処方です。
次のような人に有効です。
- 体力が中等度以上
- 分泌物が多い(患部がジュクジュクしている)
- かゆみが強い
- 局所的に熱感がある
- 夏季に増悪する
- 口渇がある
消風散は上記のような特徴のあるアトピー性皮膚炎の方に使用されることがあります。ただし、アトピー性皮膚炎=消風散ではないことに注意してください。
アトピーに対する漢方薬を選ぶ場合、どの漢方薬を使い分けるかという選択が必要です。というのも、アトピー性皮膚炎に対して有効な一つの漢方薬があるわけではなく、体質や状態に合わせた漢方薬の使い分けが重要です。
したがって漢方医学的には、同じアトピーでも乾燥・ジュクジュクした状態なのか、またはそれらが混在した状態なのか、などの状況と、証の見分けが難しく、その状態ごとに対処が異なります。
そのため、皮膚や全身の状態ごとの見極めが重要です。消風散は湿潤性の皮疹や顔面の紅潮などの状態の時に使用され、乾燥している状態には、補中益気湯、十全大補湯、黄耆建中湯などが選択肢になってきます。
消風散の作用・効果
石膏(セッコウ)や知母(チモ)は炎症を鎮める作用があります。防風(ボウフウ)や荊芥(ケイガイ)には色々な皮膚疾患を和らげる働きがあり、蒼朮(ソウジュツ)や木通(モクツウ)はジュクジュクした湿疹を改善させます。これらの生薬を組み合わせることで、かゆみを抑え、湿疹などの皮膚疾患の症状を改善させる作用があります。
薬効試験では、抗ヒスタミン作用や、浮腫の抑制、抗アレルギー作用が認められています。
成人でのアトピーでの使い分け例
Clinical dermatology 1988より
Progress in Medicine 16:2227-2229,1996にて、外耳道の湿疹に有効であったという報告もあります。
消風散の成分・効能
消風散は、13種類の生薬からなります。
・荊芥(ケイガイ):シソ科ケイガイの花穂および茎葉を乾燥させたもの。薬効は、鎮痛作用、発汗作用、解熱作用、解毒作用があります。
・防風(ボウフウ):セリ科のボウフウの根および根茎を乾燥させたもの。薬効は、解熱作用、鎮痛作用があります。
・蒼朮(ソウジュツ):キク科のホソバオケラの根を乾燥させたもの。薬効は、「水滞」の改善し体内の水分代謝を正常にする働きがあります。
・木通(モクツウ):アケビ科のアケビまたはミツバアケビのつる性の茎を横切りにして乾燥したもの。薬効は、利尿作用、抗炎症作用があります。
・石膏(セッコウ):天然の含水硫酸カルシウム。薬効は、止瀉作用、「熱」を冷ます作用があります。
・知母(チモ):ユリ科ハナスゲの根茎。薬効は、鎮静作用、解熱作用、利尿作用、止瀉作用がある。湿疹に効果があります。
・苦參(クジン):マメ科クララの根を乾燥させたもの。薬効は、発汗作用、発散作用があり、解熱、鎮痛、止血、抗炎症、皮膚疾患に効果があります。
・地黄(ジオウ):ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、「腎」の働きを活性化します。
・当帰(トウキ):セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを良くします。
・牛蒡子(ゴボウシ):キク科ゴボウの種子を乾燥させたもの。薬効は、去痰作用、排膿作用などがあります。
・胡麻(ゴマ):ゴマ科ゴマの種子。薬効は、滋養強壮作用があり、皮膚の血行を改善し皮膚を潤す作用があります。
・蝉退(センタイ):セミ科クマゼミ、アブラゼミその他大型セミ科の幼虫の全脱皮体。薬効は、解熱作用、鎮痙作用があり、蕁麻疹などの皮膚掻痒感に効果があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張をゆるめる作用があります。
消風散の副作用
カサカサする乾燥したかゆみや体力が虚弱な人には適していません。
企業報告ではありますが、消風散が原因の可能性がある赤み・発疹・じんましんなどの報告もあります。
石膏・地黄・当帰などの配合生薬の影響と考えられていますが、食欲低下や悪心(気持ち悪い)・嘔吐・軟便や下痢などの報告があります。
配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。アルドステロン症、ミオパシー(筋肉障害)、低カリウム血症の人は使用できません。
消風散の服用方法
ツムラ消風散エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください