便秘の漢方薬(効果・効能・体質別)

便秘症状の特徴

便通のリズムは人によって異なるため、毎日排便がないからと言っても異常ではありません。排便時間が長かったり、残便感があったり、腹痛や腹部膨満感を伴ったりと不快な症状があれば便秘として考えます。便秘に悩んでいる人は、女性の方が多く、およそ二割の人がひどい便秘に悩んでいると言われています。

便秘状態が続くと、腹部の不快感、食欲不振、排泄時の苦痛が生じて生活の質が大きく低下してしまいます。

便秘の原因は大きく2つに分けられ、何らかの病気があり、それが原因となって起こる器質的な便秘と習慣が原因とされている便秘に分けられます。

器質的便秘の原因は、ポリープ、大腸がん、過敏性腸症候群、腸閉塞、腸炎などがあります。50歳を超えて新しく出てきたような便秘は、一度大腸カメラなどを行い、何か明らかな原因によって起こっている便秘がないかチェックしておくと安心でしょう。

習慣性便秘の原因は、大腸の蠕動運動の低下によって、「お腹が張っているのに排便できない」弛緩性便秘(常習性便秘)、ストレスによる結腸の緊張が原因で起こる痙攣性便秘、便意を意識的に我慢し続けることによって排便反射が抑制されて起こる直腸性便秘に分けられます。

便秘に対する西洋医学の治療

まずは、消化管を中心に病気がないかを検査します。ポリープやがんが見つかれば、その治療が行われます。

習慣が原因の便秘は、通常は下剤が処方されます。さらに、生活指導、食事指導を行い便秘の改善をはかります。

薬剤は機械的下剤(塩類下剤〈酸化マグネシウムやカマという名前が多いです〉、膨張性下剤、浸潤性下剤)、刺激性下剤、自律神経性下剤に分けられます。また、作用の強さで、2~6時間後に排便を促す下剤と、8~12時間後に排便を促す下剤に分けられます。

一般に、弛緩性の便秘には膨張性下剤、刺激性下剤が使われ、痙攣性の便秘には、塩類下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤が使われます。痙攣性便秘には、下剤と一緒に食事療法やストレスや不安の強い場合には抗不安薬や抗うつ薬を用いることもあります。直腸性便秘には、腸内の蠕動運動を亢進と排便反射を刺激する座薬が用いられます。

下剤を用いる場合は、作用の弱いものを少量より徐々に増やしながら適量を決めて、症状が改善すれば、減量したり中止をします。同じ薬剤を長期に連用すると習慣性を生じてしまうので、種類を変えたり、作用機序が異なる薬剤を用いて治療をしていきます。

漢方医学の治療

漢方では、習慣性便秘の治療が中心になります。

便秘は「気逆」「気虚」「お血」「血虚」「水滞」など、気血水のバランスが崩れることによって起こると考えます。

治療は、大黄を含む漢方薬を使えるかどうかで判断していきます。大黄は腸を刺激して、蠕動運動を促進させる作用があり、西洋薬の下剤でも配合成分として用いられています。漢方では、ただ単に便を出すだけではなく、体全体を温めて、腸管を温め、さらに腸を潤すことによって、腸の動きをスムーズにする効果があります。体質を改善することによって、結果的に便秘を解消することになります。

便秘によく用いられている漢方薬大黄甘草湯です。便秘以外に特に症状がなく、体力が中程度以上であれば用いることができます。

体力があり、胃腸が丈夫な人には、大黄と芒硝を含む漢方薬が効果的です。芒硝は、含水硫酸ナトリウムからなり、便の水分量を増やして、軟らかくする作用があります。調胃承気湯、大承気湯、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯に含まれており、よく用いられます。

そのほかにも、お腹が張った感じのある便秘には、大柴胡湯や、のぼせ気味でよく便秘する人には、三黄瀉心湯が効果的です。

生薬と腸の活動による使い分け

大黄は、センノシドと同じ成分で、腸の運動を活発にして、便を輩出します。

一方で、麻子仁丸や潤腸湯は、クロライドチャネルという消化管で働く部分があり、便中の水分を増やすことで便を柔らかく作用が加わっています。これは、アミティーザ®と同じ機序になります。

大建中湯などは、上記の2つとはまた異なる機序で消化管の運動を更新させるため、センノシドや大黄を含む便秘薬が効きにくくなってきた方や、センノシドや大黄で腹痛になってしまう方などに適した漢方薬です。

便秘に対して用いられる主な漢方処方

以下に体質別に用いられる漢方処方を挙げます。

ライフスタイルで注意すること

排便回数に関してはあまり神経質にならないようにすることが大切です。また、排便リズムを一定にすることや、食生活を見直し、運動をしたり、ストレスをため込まないことも大切です。

参考文献

・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・ひどい便秘の治し方(講談社)

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